教育とは本来、未来を担う子どもたちの安全を守り、その健やかな成長を導くための、極めて公的で重い責任を伴う営みである。
しかし、長野県御代田町の町立御代田南小学校で発生したいじめ重大事態の背景を紐解くと、そこに教育的な理念は存在しない。浮かび上がってきたのは、小園拓志町長による「町政の私物化」が教育分野にまで深く根を張り、子どもたちのSOSを犠牲にしてでも自らの保身と利益を優先する大人たちの醜悪な姿である。
いじめ重大事態連載の第8回では、茂木伸一氏と白鳥郷史元校長らの下で、わかっているだけでも2年間で延べ189人に及ぶいじめ被害の訴えが、わずか7件にまで矮小化されるという異常な実態を検証してきた。
彼らがそこまでして「いじめの少ない平穏な学校」という虚像を守りたかった背景には、長野県が推進するウェルビーイング実践校「TOCO-TON」のモデル校という実績づくりや、退職後のキャリア(天下り的領域)の確保といった、大人たちの私欲が絡んでいた疑いが極めて強い。
いくらなんでも、2年間で延べ189人にも及ぶ「いじめSOS」を、国への報告時に、たった7件に圧縮するのは常軌を逸している。
しかし、小園町長はこうした現場の腐敗を正すどころか、令和6年12月の定例議会において、茂木伸一氏を不自然なまでに高く評価し、再任を強行に推し進めようとした。
議会の記録を紐解くと、そこで繰り広げられていたのは、信じられないほど低次元な「大人の茶番劇」であった。
議会で繰り広げられた大人の茶番——賛成派と反対派の明白な対比
延べ189人ものいじめSOSが矮小化され、深刻な学級崩壊が起きていた御代田南小学校。この「現実」を前にして、議事録に残された賛成派(町長派)と反対派の生々しい発言を対比すると、いかに町長側が現実から目を背け、身内の擁護に終始していたかが浮き彫りになる。
【町長と賛成派による「異常なヨイショ」】
「この6年間の教育行政の進展は、どの自治体にも負けないすばらしいレベル感のものであり、ここでその流れを変えてしまっては大変もったいない」
「(他に選択肢はないのかという問いに対し)はい、そのように確信して提案をさせていただいております」
— 小園拓志 町長
「(学級崩壊は)現在では落ち着きを取り戻していると聞いております。(中略)落ち着きを取り戻したことは、茂木教育長の実績として高く評価されるべき実例なんじゃないでしょうか」
— 森泉謙夫 議員(賛成意見)
「その人物は誠に温厚、誠実であり、町民の誰とでも温かく接する人柄の持ち主であります。(中略)人事案件はデリケートな議案であり、本会議での討論にはそぐわない感が否めません」
— 内堀喜代志 議員(賛成意見)
【現実を見抜いていた良識派の真っ当な指摘】
「昨年御代田の小学校の方であった学校の中の問題(※学級崩壊)が尾を引いてか、その学校の全国学力テストの学力が大幅に下がりました」
— 赤田憲子 議員(反対意見)
「数字やパーセンテージだけではなく、人を見て行う教育のために、私も勇気を振り絞り、子どもたちのために(中略)ここで反対の意思表示をいたします」
— 内堀綾子 議員(反対意見)
※(学級崩壊)とは、令和5年の5年2組・3組で担任が途中交代するという事案のことである。
当時の議会動画
賛成派が「人柄が良い」「本会議で討論するな」と思考停止の擁護を繰り返す一方で、反対派の議員たちは、見栄えの良い「虚像の数字」の裏で苦しむ児童の実害(学力低下やSOSの黙殺)を的確に見抜いていたのである。
町長の言行不一致——我が子は「東京の私学」へ
内堀綾子議員は、同議会の反対討論の中で、小園町長に対する極めて決定的な皮肉を放っている。
「小園町長が、御代田の教育についてよいと思っているならば、その教育の場を、小園町長ご自身は御代田を選択するはずですが、いかがでしょうか」
小園町長は初当選時、御代田町を「県下一の教育のまち」にすると公約し、自身の子どもも御代田の学校に通わせるとアピールしていた。ところが実際には、途中から娘二人を東京へ移住させ、私学に通わせている(一時的に御代田の公立学校に通っていた事実はある)。
自分の子どもには東京の私学を与えながら、御代田の子どもたちが通う学校の「いじめ被害」や「学級崩壊」の実態には目を向けず、表面上の「TOCO-TON選定」という手柄だけを議会で誇る。
この状況を鑑みれば、小園町長にとって町の教育とは、子どもたちのためではなく、自身の政治的な成果(パフォーマンス)として利用するための道具に過ぎないと思われても仕方がない。
教育分野に顕在化した「町政私物化」の真実
これほどまでに現場を荒廃させた教育長について、小園町長は「知ってて」再任を推したのか、それとも「知らずに」推したのか。
知っていれば隠蔽の黙認であり、知らなければ行政の長としての見識や任命責任が厳しく問われる。
しかし、町長が「他に選択肢はない」とまで断言し、茂木伸一氏の再任を強行に推した裏には、知っていた・知らなかった以前の、極めて低次元で生々しい「別の理由」が存在する。
小園町長は議会で、茂木伸一氏との関係を「互いを信頼し、車の両輪となって仕事を進めてきた」と語った。
だが、その「車の両輪」は、子どもたちが必死に発した延べ189人のSOSを無残に轢き潰しながら進んでいたのではないか。そして、その信頼関係の実態は「債務者(町長)と債権者(教育長)」という、金銭による歪んだ関係であった。
小園町長が、複数の役場職員や関係者から多額の借金を繰り返しているとの情報は以前から当サイトにも寄せられているが、その借入先(債権者)の一人が、他ならぬ茂木伸一氏なのである。
地方自治体の首長が、自ら任命に関わる教育長から個人的に金を借り、その債権者本人の再任を議会に提案したことは、人事判断の客観性・公正性が保たれていたとは到底言い難く、極めて深刻な利益相反的構造である。
金銭関係が具体的な職務上の便宜や利益供与と結びつけば、単なる政治倫理上の問題ではなく、別の法的問題に発展する可能性すらある。
それをわかっていながら借金を重ねる町長の困窮状態は異常であり、そうした金銭関係を持った茂木伸一氏の倫理観も理解し難い。行政のトップ同士として、公私の区別という感覚が完全に破壊されている。
「選択肢はあった」——新教育長が証明した正常化への歩み
小園町長が議会で語った「確信」とは、本当に教育者としての手腕への確信だったのだろうか。個人的な借金のある相手だからこそ、「この人を推す以外の選択肢は自分にはない」という事情が人事判断に入り込んでいたのではないか。
実際、その断言とは裏腹に、当時すでに町教育委員会には砥石順一氏がいた。茂木伸一氏の再任案が議会で否決され、約3カ月の空席を経て令和7年4月に教育長に就任したのが、当時、町教育委員会の指導主事を務めていた砥石順一氏である。
砥石順一氏は、昭和59年4月に長野市立朝陽小学校を初任地として教員生活をスタートし、令和4年3月に佐久市立田口小学校の校長を最後に定年退職するまで、38年間にわたり教育現場に携わってきた。その後、御代田町教育委員会学校教育係の指導主事に就任している。
教育長への任命議案が提出された際、町側は令和7年第1回定例会で、砥石順一氏について「日々小学校を訪問し、教職員や管理職の困りごとに対しての助言や指導」を行い、不登校傾向にある児童生徒に対しても「様々な角度から直接児童生徒に接して」不登校対策に取り組んできたと、その実績を具体的に説明している。
さらに、長年の教育現場での経験と学校教育指導の実績を挙げ、「人格、識見ともに適任者」と評価した。教育長任命議案は、議会でも質疑・討論なく、起立多数で同意されている。
つまり、砥石順一氏は茂木伸一氏の再任が否決された後に急遽探し出された人物ではない。茂木伸一氏の再任が議論されていた時点ですでに町教育委員会内部におり、38年間にわたる教育現場での経験と、校長、指導主事としての実績を持ち、後に町自身が教育長として「人格、識見ともに適任者」と議会に説明するほどの人材だったのである。
砥石順一氏は、指導主事の頃から学校に足を運べば児童一人ひとりに声をかけ、自らの目で子どもの表情や様子を確認して回るほどの徹底した現場主義者である。机上の報告や数字だけで学校を見るのではなく、自ら現場へ入り、自分の目で子どもを見る。教育現場と行政の双方を知る実務家として、傑物と言ってよい人物だ。
そして砥石順一氏が教育長に就任すると、長年澱んでいた御代田町の教育行政は一気に動き始めた。
重大事態の被害女児の保護者が提示した学校の不適切対応や記録の不存在について、町教育委員会は具体的な調査を行い、東信教育事務所へ上申。本件が重大事態の調査対象となる方向へ動いた背景にも、砥石順一氏の助力があった。
現在の御代田南小学校では、それまで形骸化していた学校いじめ対策組織(いじめ対策委員会)が定期的に開催され、協議内容が記録されるなど、ようやく法や国の基本方針に沿った対策が始まっている。
だが、本来これが教育行政としての「当たり前」の姿なのだ。茂木伸一氏の時代が異常だったのである。
小園町長が再任を強く求めた茂木伸一氏が議会で不同意となり、別の教育長に代わって初めて、御代田町の教育行政は正常化へ向けて動き始めた。
この事実こそが、町長の人事判断がいかに軽率で、私的関係の影響を疑われても仕方のないものだったかを雄弁に物語っている。
常態化する借金とモラルハザード
小園町長が教育長から金を借りていたという事実は、氷山の一角に過ぎない。
議会での質問により、小園町長には令和5年度で約5,780万円、令和6年度で約5,340万円もの借金があることが判明している。過去には自身の口から「FXで失敗して借金がある」と語ったこともあり、本サイトでも資産公開資料を基に継続的に検証してきた。
さらに深刻なのは、町長が役場職員や関係者から常習的に金銭を借りているとの具体的な情報が寄せられていることである。当サイトには「職員から度々お金を借りている。催促するまでしばらく返さない」との情報提供があり、議会でも内堀綾子議員が、人事権を持つ町長が町内の人々から借入れを行うことによる利権や倫理上の問題を指摘している。
人事権や任命権を持つ圧倒的に強い立場の首長が、部下に金を無心すれば、職員は断りにくい。これはその実態によっては立場を利用したハラスメント、さらには強要に類する問題へ発展する可能性もあり、行政運営の公正性を著しく損なう行為である。
今回の「借金先である教育長の再任強行」は、まさにこのモラルハザードが教育行政の人事にまで直接的に現れた最悪のケースと言える。
私欲の犠牲になった子どもたち
教育者たちのキャリアや天下り領域の確保。政治的パフォーマンスのための美辞麗句。そして、首長と教育長の間に横たわる、行政人事の公正性を根底から疑わせる個人的な金銭貸借の関係。
小園町長による「町政の私物化」とモラルの崩壊が教育分野にまで顕在化した結果、御代田の教育行政は完全に機能不全に陥った。
そのツケを最も残酷な形で払わされたのは、助けを求めるSOSを無残に握りつぶされ、見守り体制を放置され、暴行被害にまで遭って心身を深く傷つけられた御代田南小学校の子どもたちとその親たちである。
未来を担う子どもたちの命と安全を犠牲にしてまで繰り広げられた、この大人の借金と保身にまみれた茶番劇を、私たちは決して看過してはならない。
※いじめ重大事態シリーズの記事に掲載されているイラストは、イメージです。実際の登場人物の行動とは関係ありません。
この動画は、小園町長の5,000万円を超える借金問題や不透明な副業疑惑、さらには教育長の再任否決に至るまでの経緯を解説しており、町長の個人的な金銭問題が行政にどのような影響を与えているかを知る上で非常に参考になります。












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