概要は動画で
岡部温樹校長の公文書虚偽記載の疑い
2026年3月4日、御代田南小学校で、前年秋に児童Aから抱きつき・威迫・器物損壊等のいじめを受けた女児が、児童Bから腹部を複数回殴られ、さらに蹴り上げられる暴行事案が発生した。
ところが、この暴行は、学校から教育委員会へ提出された3月分の月例報告において、「暴力」でも「いじめ」でもなく、「問題行動」として処理されていた。
さらに、その後、学校から東信教育事務所へ提出された公文書には、実際には開催されていない「いじめ対策委員会」を「開催した」とする記載まで存在していた。
その公文書が、「事故速報カード」である。
町教育委員会の2026年6月26日付回答によれば、事故速報カードとは、長野県教育委員会が2016年3月28日付けで発出した「義務教育諸学校等に係る報告事項等について」(27教義第630号)に基づき、学校施設、教職員、児童生徒に係る事故やけが等について、学校長名で上部機関へ報告する文書である。
本件の事故速報カードは、3月4日の暴行直後に作成されたものではなく、保護者が町教育委員会へ重大事態の申立書を提出し、町教育委員会が「いじめ重大事態の疑いがある」と判断したことを受け、学校が2026年4月17日に作成・発信し、東信教育事務所へ提出したものである。
保護者が公文書公開請求によってその内容を確認したところ、そこには、実際の学校対応と明確に食い違う記載が存在していた。
長野県御代田町の町立御代田南小学校で発生したいじめ重大事態。
第4回となる今回は、岡部温樹校長名で東信教育事務所へ提出された事故速報カードの虚偽記載と、重大事態調査の準備段階で明らかになった「協議記録ゼロ」の実態を検証する。
事態は、単なる「対応の遅れ」では説明できない段階に至っている。
学校内に残されていない協議記録、実際には開催していない委員会を開催したとする上部機関への報告、月例報告と事故速報カードで異なる事案分類、そして学校に一次記録がないため、町教育委員会が教職員への事後聴取によって第三者委員会への提出資料を補わなければならなくなった異常な状況である。
【本稿で検証する主な問題】
- 3月4日の暴行は、なぜ月例報告で「暴力」でも「いじめ」でもなく「問題行動」とされたのか
- 3月4日の受傷を伴う暴力事案について、なぜ事故速報カードによる事故報告が行われなかったのか
- 事故速報カードに記載された「3月5日のいじめ対策委員会」は、本当に開催されたのか
- 9月22日以後の複数人による見守り下で被害が続いた事実を、なぜ事故速報カードに記載しなかったのか
- 保護者による重大事態の申立て経過は、なぜ「事態が複雑化した」とすり替えられたのか
- なぜ学校には、第三者委員会へ提出できる協議記録が存在しないのか
- 記録不存在によって、町教育委員会と第三者委員会にどのような追加負担が生じているのか
問題① 受傷を伴う暴行を「問題行動」とした学校判断
2026年3月4日、被害女児は、加害児童Bから腹部を複数回殴打され、さらに蹴り上げられた。
学校が事前に説明していた見守り担当職員は、その時間帯に教室内におらず、教室内にいた担任も暴行に気付かなかった。保健室での確認や保護者への即時連絡も行われず、被害女児は翌日に医療機関を受診した。
だが、この受傷を伴う暴行事案は、御代田町教育委員会へ提出された3月分の月例報告において、「暴力」の欄に一件も計上されていなかった。
この不自然な集計を公文書公開請求で確認した保護者は、町教育委員会に対し、3月4日の暴行事案が月例報告の集計対象に含まれているのか、どの分類項目に計上されたのか、事故速報カードとの整合性はどう説明されるのかなどを照会した。
2026年6月26日、町教育委員会から届いた回答メールでは、次の事実が明らかにされた。
【町教育委員会の回答で確認された分類】
- 3月4日の暴行事案は、3月分の月例報告の集計対象に含まれている
- ただし、「暴力」でも「いじめ」でもなく、「問題行動」に計上されている
- 被害女児に関する一連の事案は、11月分では「いじめ」、3月分では「問題行動」として分類されている
- 月例報告の集計元となる個別報告書、入力記録その他の基礎資料は存在する*
同じ被害女児に関する継続的な事案でありながら、11月には「いじめ」として扱っていたものを、3月4日に腹部への複数回の殴打と蹴り上げが発生した段階では、「問題行動」へ分類していたのである。(*町教育委員会は基礎資料が存在すると回答しているが、その資料はこれまでの公文書公開請求では確認できておらず、資料名、作成者、保存場所も明らかになっていない。)
事故速報カードは、長野県教育委員会の通知に基づく県共通の報告様式
事故速報カードの根拠となるのは、長野県教育委員会が2016年3月28日付けで発出した「義務教育諸学校等に係る報告事項等について」(27教義第630号)である。
また、県下の学校現場では、「事故速報カード(長野県様式)」が共通の報告様式として使用されており、学校名、校長名、事故の種類・程度、発生日時・場所などを記載して、学校長名で第一報を行う運用が確認されている。
3月4日の暴力事案に対する事故報告と、重大事態の報告は別の手続である
事故速報カードについて、保護者は東信教育事務所にも、その役割と本件での取扱いを確認した。
東信教育事務所担当者の説明によれば、受傷を伴う暴力事案が発生した場合、その事案について事故速報カードを提出するという利用が一般的である。一方、後にいじめ重大事態となった段階で、一連の経過を報告するために事故速報カードを作成する場合もあるという。
この説明を踏まえると、次の二つは区別して検証する必要がある。
【本件で区別すべき二つの報告】
- 3月4日の暴力・受傷事案に対する事故報告――殴打、蹴り上げおよび受傷という個別の事故について、事故速報カードで上部機関へ報告する手続
- 一連のいじめに関する重大事態の報告――2025年秋以降の継続的ないじめと学校対応を含め、重大事態の疑いが生じた経過を上部機関へ報告する手続
そのため、岡部温樹校長には、少なくとも次の判断経過を説明する責任がある。
- 3月4日の暴力・受傷を、事故速報カードによる報告対象としなかった理由
- 「暴力」ではなく「問題行動」と分類した判断主体と判断根拠
- 事故報告を行わない判断について、町教育委員会へ相談または報告したのか
- 4月17日のカードが、3月4日の事故報告を兼ねるものと整理されたのか
この分類の妥当性について、保護者が2026年6月29日の面談で新任の教頭に、暴力行為を「問題行動」として計上することがあるのかと尋ねると、次のように回答した。
「一般的に、暴力は暴力で入れます」
この説明に照らせば、本件の月例報告における分類判断の妥当性には、重大な疑問が残る。
以上から、本件で問われるのは、受傷を伴う暴行をどのように認識し、なぜ上部機関へ事故として報告せず、月例報告上も実態に即した分類を行わなかったのかという、岡部温樹校長の判断過程である。
問題② 開催していない委員会を「開催した」と記載
2026年3月4日の暴力事案を含む一連の経過について作成された事故速報カードには、冒頭の「報告者職氏名」欄に「校長 岡部温樹」、学校及び校長名の欄にも「御代田町立御代田南小学校長 岡部温樹」と記載されている。
事故速報カードの「学校のとった措置」欄には、2026年3月5日午前8時の対応として、次のように明記されている。
「いじめ対策委員会を開き、○年○組の見守り体制について検討する。」
しかし、2026年6月29日の面談において、保護者が、この暴行事案について、いじめ対策委員会として協議したのかを確認したところ、岡部温樹校長は次の趣旨を明確に述べた。
- 「校内では、あの委員会としては行ってないです」
- 「教頭との共有はしましたけれども」
法に基づくいじめ対策委員会としては開催しておらず、実態は校長と教頭の間で情報を共有しただけだったという説明である。
管理職間で会話をしたことと、学校いじめ対策組織を招集し、構成員によって事実確認、危険性評価、対応方針、役割分担、見守り体制を協議することは同じではない。
事故速報カードでは「いじめ対策委員会を開いた」と報告しながら、岡部温樹校長自身は、保護者および教育委員会同席の面談で委員会としては行っていないと認めている。両者は明確に両立しない。
本稿では、岡部温樹校長名で提出された事故速報カードの当該記載を、事実に反する虚偽記載であると評価する。
監視下で被害が続いた事実を消した事故速報カード
御代田南小学校では、2025年9月22日の臨時学級懇談会以後、複数の教職員による見守りが実施されていた。
つまり、被害女児に対する一連のいじめと2026年3月4日の暴行は、学校が見守り体制を敷いていたにもかかわらず、その監視下で発生したものである。(度重なる見守り強化を実施したにもかかわらず、いじめを防げなかった経緯は、第2回目の記事を参照)
この事実は、本件における学校の安全管理と再発防止措置の有効性を検証する上で、最も重要な背景の一つである。
しかし、事故速報カードの「学校のとった措置」欄には、9月22日以後に実施していた複数人による見守り、その後の見直し、実際の配置状況、見守りが機能しなかった経過について、ひと言も記載されていない。
記載されているのは、前章にも記した、3月5日「いじめ対策委員会を開き、○年○組の見守り体制について検討する。」という一文だけである。
この記載だけを読めば、学校が3月4日の暴行を受けて初めて問題を把握し、直ちにいじめ対策委員会を開催して、新たな見守り体制を検討したかのように受け取られる。
しかし、実際には、見守りは前年9月から行われており、その監視下で被害が繰り返されていた。さらに、カードに記載された「いじめ対策委員会」も実際には開催されていなかった。
本稿は、事故速報カードから、複数人による見守りを実施していながら被害を防止できなかった経過を完全に脱落させたことについて、学校の不作為と安全管理上の失敗を上部機関から隠すための意図的な記載であると評価する。
事故速報カードが省略したのは、周辺的な事情ではない。
見守りを実施していたこと、その見守りが機能しなかったこと、その監視下で被害が繰り返されたことは、学校が講じた安全措置の有効性と、岡部温樹校長の管理責任を判断するための中核的事実である。
その中核的事実だけを記載せず、実際には開催していない委員会によって新たな見守り体制を検討したと記載した以上、単なる記載漏れや要約とは評価できない。
重大事態としての申立て経過を消した記載と同様に、ここでも事故速報カードは、学校が何をしてきたかではなく、学校の不作為が上部機関から見えない形に事実関係を組み替えている。
重大事態の申立て経過を「事態が複雑化した」とすり替えた報告
事故速報カードの問題は、他にもある。保護者が2025年11月のいじめ発覚の時点から、重大事態としての対応を求めてきた経緯が脱落し、学校側の不作為が見えない形へ書き換えられている。
例えば、保護者が重大事態を訴えていることに関する記述
6 事故の概要
継続的に被害女児がいじめを受けていることは、いじめの重大事態にあたると担任に訴えがあった。~事故速報カードから一部抜粋
保護者は、担任に対しては、電話で重大事態扱いすべきであるということは、確かに話をしているが、岡部温樹校長に対しては、担任に話す前から、口頭、書面、メールで何度も重大事態扱いとして対応を求めている。さらに、2025年12月22日には、被害女児のいじめ事案だけでなく、クラスの学級崩壊についても重大事態の調査対象にすべきとも直接口頭で伝えている。
保護者は、いじめが発覚した当初から、いじめ防止対策推進法に基づく対応を求めていた。さらに、同法と長野県いじめ対応マニュアルを自ら印刷して岡部温樹校長へ直接手渡し、法と県マニュアルに沿った組織的対応を明確に要請している。
第1回の記事で示したとおり、岡部温樹校長との複数回のやり取りを経て、2025年11月21日には見守り体制などを記載した公印付き文書が保護者へ交付された。
保護者は、学校がいじめ重大事態として組織的に対応すると認識していた。それを前提として、12月3日、内容証明郵便によって、今後の対応、関係教職員への周知、再発防止などを求めた。しかし、その後も重大事態としての報告や調査が行われていることを示す説明はなかった。
保護者は2026年1月から2月にかけて、「本当に重大事態として扱われているのか?」という趣旨のメールを岡部温樹校長に複数回送信したが、岡部温樹校長から具体的な回答は示されなかった。回答期限を求めたメールもあったが、回答期限を過ぎても回答されなかった。
2026年4月2日、教育委員会が同席した面談において、保護者は、重大事態としての対応を繰り返し要請してきたにもかかわらず、なぜ正式な手続が行われていないのかと説明を求めた。
これに対し、岡部温樹校長は、次のように回答した。
重大事態に「準じた」対応をした 2026年4月2日 岡部温樹校長
しかし、「重大事態に準じた対応」は、法令上定められた重大事態調査の手続ではない。
その発言を受けて保護者は、「準じるとはどういう意味か。法定の記録や説明が行われていないではないか。つまり、岡部温樹校長のいう『法に準じた対応』とは、自由裁量で行った対応ではないか」と指摘している。その後、5月の公文書公開請求によって、保護者が被害女児から確認した新たないじめについても、組織的な調査や協議を裏付ける記録が確認できないことが明らかになった。
「重大事態に準じた対応」という表現は、重大事態に相当する組織的対応を想起させる。しかし、実際には法定組織による判断や協議記録が確認できず、その説明を裏付ける事実は示されていない。
そして、4月2日に同席した教育委員会が、重大事態の調査をする方向でと話をまとめたにもかかわらず、岡部温樹校長は4月10日付回答書において、初めて「校長としては、重大事態とは考えていない」との見解を示している。
校長個人の見解だけで手続を止めることは許されない
いじめ防止対策推進法および長野県いじめ対応マニュアルでは、いじめか否かを校長個人ではなく、学校いじめ対策組織(いじめ対策委員会)によって判断することが求められている。同マニュアルは、子ども同士のトラブルや「いじめの疑い」であっても、情報をすべて学校いじめ防止等の対策組織へ報告し、組織で判断するよう明記している。
また、児童や保護者から、いじめによって重大事態に至ったとの申立てがあった場合には、学校から設置者(教育委員会)へ報告し、学校または教育委員会による調査を行う必要があると示している。
したがって、岡部温樹校長が、いじめ対策委員会による組織的な判断も、教育委員会への正式な報告も行わないまま、個人の見解として「重大事態とは考えていない」と回答し、手続を止めることは許されない。
結果として、保護者からの重大事態の申立てを正式な手続に載せず、法定の対応を行っていなかった事実が、外部から確認されない状態が数か月間続いた。
4月2日の面談で、教育委員会は重大事態調査の方向性を示していた
2026年4月2日の面談では、保護者が、同席した御代田町教育委員会に対して、2025年11月以降、法と県マニュアルに沿った対応、過去のいじめ事実の調査、重大事態としての取扱いを繰り返し求めてきた経過を説明した。
さらに、学校が重大事態としての調査を行っているのか、そもそも重大事態への該当性を検討しているのかについて、期限を設けて回答を求めても岡部温樹校長が回答しなかったこと、見守りを約束した後も12月と3月に新たな被害が発生したこと、学校の対応が法と県マニュアルに沿っていないことを具体的に指摘した。
保護者はその上で、町教育委員会に対し、これまで学校が行わなかった事実確認と、当初から求めてきた重大事態調査について、教育委員会としての見解を求めた。
これに対し、4月に赴任したばかりの新任である柳澤教育次長は、これまでの経過を改めて精査した上で、「重大事態として調査する方向で進めるべきである」との趣旨を述べた。砥石順一教育長も、その方向性に同意した。
つまり、2026年4月2日の面談は、岡部温樹校長が数か月にわたり正式な手続へ載せなかった重大事態の取扱いについて、町教育委員会が調査へ進む方向性を示した、重要な転換点であった。保護者は、その当日、砥石教育長から直々に謝罪も受けている。
ところが、2026年4月17日に岡部温樹校長が提出した事故速報カードには、教育委員会が重大事態調査の方向性を示した事実が一切記載されていない。
記載は以下の通り
4月2日(木)16:30 被害女児の保護者と学校(校長、教頭、新学年主任)で面談を行う。町議会議員、町教育委員会も同席する。
その一方で、カードは2026年4月15日の欄に、
4月15日(水)11:00 町教育委員会より、被害女児の保護者から、いじめ重大事態の認定と第三者委員会の申立書が4月14日に届き、町教育委員会として正式に受理し調査を開始する旨を伺う。
と記載している。
この時系列だけを読めば、4月14日に保護者が初めて重大事態調査を申し立て、それを受けて教育委員会が調査を開始したように見える。
しかし実際には、保護者は前年11月から重大事態としての対応を求め、4月2日の面談では、町教育委員会がすでに重大事態調査へ進む方向性を示していた。
4月14日の申立書は、突然新たに提起されたものではなく、それまで学校側に無視され続け、4月10日には、岡部温樹校長が独断で「重大事態とは考えていない」というとんでもない回答書を送ってきたことから、事態の進展が危ぶまれたため、正式な書面として町教育委員会へ提出したものである。
それにもかかわらず、事故速報カードでは、学校側が申立てを数か月間正式な手続に載せなかった経過と、4月2日に町教育委員会が示した調査の方向性が消され、3月の暴行によって事案が複雑化したため、保護者が4月になって新たに第三者委員会を求めたという記載へ置き換えられている。
さらに、2026年4月10日付回答書では、保護者が、なぜ重大事態に関する要請へ回答しなかったのかと尋ねた質問に対し、岡部温樹校長は「回答を控える」と記載している。
自らの判断経過を説明しない一方、上部機関への事故速報カードには、学校側の不作為が見えない説明を記載していたのである。
結果として、事態を複雑化させた重大な要因の一つは、学校が重大事態の申立てを正式な手続に載せず、その判断経過を記録・説明しなかったことにある。
申立書の提出後になって変わった学校の認識
前章で確認したとおり、学校は、3月4日の暴行発生時にも、3月分の月例報告を作成した時点にも、本件を重大事態の疑いがある事案として扱っていなかった。
町教育委員会の2026年6月26日付のメール回答は、事故速報カードが作成された経緯について、次のように説明している。
町教育委員会に申立書が提出されたことにより、町教育委員会がいじめ重大事態の疑いがあるとしたことから、学校が判断し作成した。
また、月例報告と事故速報カードの整合性については、次の趣旨の回答が示された。
3月の月例報告作成時には「問題行動」として捉えていたが、町教育委員会に申立書が提出され、いじめ重大事態の疑いがあるとされたことから、学校も「いじめ重大事態の疑いがある」と捉えた。
この回答が示す事実は重大である。
保護者が2026年4月14日に町教育委員会へ申立書を提出し、町教育委員会が重大事態の疑いを認めた後になって、初めて学校も認識を変更し、事故速報カードを作成したのである。
月例報告と事故速報カードに生じた矛盾
一方で、事故速報カードには、「3月5日にいじめ対策委員会を開いた」と記載され、あたかも暴行直後から組織的ないじめ対応を行っていたかのような時系列が示されている。
しかし、前章で確認した月例報告上の取扱いと、学校が申立書提出後に初めて重大事態の疑いがあると認識したという町教育委員会の説明は、その時系列と整合しない。
事故速報カードの記載と月例報告上の取扱いは、学校が3月4日の暴行を当時どのように認識し、処理していたのかという根幹部分で矛盾している。
事故速報カードから消えた学校側の不作為
ところが、事故速報カードには、保護者が前年11月から重大事態としての対応を求めていた経緯も、岡部温樹校長が数か月間具体的な回答を示さず、4月10日になって「重大事態とは考えていない」と回答した経緯も記載されていない。
事故速報カードの「事故の概要」欄には、次のように記載されている。
「3月には(児童Bが女児に)対して、殴る、蹴るといった行為もあり、事態が複雑化したことから、保護者から町教育委員会に対して、正式にいじめ重大事態に係る第三者委員会の設置申し立てがあった。」
これは、申立てに至った経緯を正確に表していない。
保護者が第三者委員会の設置を求めたのは、「事態が複雑化したから」ではない。前年11月のいじめ発覚時から重大事態として扱うよう求め、翌年1月から2月に再三の確認を重ねたにもかかわらず、学校が正式な報告・調査手続へ移行せず、その間に3月4日の暴行が発生したからである。
学校に記録がないため、町教育委員会が事後聴取で資料を作成
事故速報カードの虚偽記載と並んで重大なのが、いじめ重大事態調査を実施する第三者委員会へ提出すべき学校の一次記録が存在しないことである。
2026年5月12日、保護者は、令和7年度における御代田南小学校全体のいじめ対策委員会の開催実績、協議記録、判断記録などを対象として、公文書公開請求を行った。
その結果、個別のいじめ事案について、いじめ対策委員会として協議し、事実確認、危険性評価、対応方針、役割分担などを決定したことを示す記録は確認されなかった。
前述の通り、6月29日の面談でも、岡部温樹校長は、法に基づく委員会としては行っておらず、協議自体の記録もないと認めている。
さらに保護者は、同校における法定手続の不履行が常態化していた可能性を確認するため、過去5年度分についても、いじめ対策委員会の開催記録、協議記録、議事録などの所在を確認する追加の公文書公開請求を行った。
2026年8月5日の電話で町教育委員会担当者は、議事録と呼べるような記録は確認できていない一方、メモ程度の文書は存在すると保護者に説明している。
一次記録と事後聴取は、証拠として同じではない
8月5日の町教育委員会担当者の説明によれば、学校側にいじめ対策委員会の協議記録がないため、町教育委員会が、第三者委員会へ提出する資料を補う目的で、関係教職員へ事後的な聴取を行ったという。
担当者は、その理由を明確に「学校が作成しているはずの記録がないから」と説明している。
本来、第三者委員会へ提出されるべきものは、事案発生当時に学校が作成した次のような一次記録である。
- 学校がいつ、どの情報を把握したのか
- 誰がいじめ対策委員会へ報告したのか
- 委員会をいつ、どの構成員で開催したのか
- どのような事実確認と危険性評価を行ったのか
- 見守り、接触防止、役割分担をどのように決定したのか
- 対策が機能したかを、いつ、どのように検証したのか
しかし、御代田南小学校には、これらを確認できる協議記録がなかった。
そのため、町教育委員会が本来の一次記録に代わる資料を、事案発生から相当期間が経過した後の教職員への聴取によって補わなければならなくなったのである。
町教育委員会の説明によれば、教育委員会が事後聴取をもとに作成した資料だけでは十分ではないため、今後、第三者委員会自身が関係教職員への聴取を行う必要があると判断しているという。
これは当然の判断である。
事案発生当時の一次記録と、調査開始後に関係者の記憶をもとに作成された資料は、証拠としての性質が異なる。後者には、記憶の変容、認識の食い違い、自己正当化、他の資料から受けた影響などが入り込む可能性がある。
学校が記録を残さなかったために、町教育委員会が事後聴取を行い、さらに第三者委員会が同じ教職員へ改めて聴取しなければならない。これは、学校の記録不存在が調査準備を二重、三重に増やしていることを意味する。
追及後にようやく始まった記録
さらに、8月5日の町教育委員会の説明では、御代田南小学校は現在になって、いじめ事案に関する記録を残す運用を始めたという。
しかし、前述のとおり、岡部温樹校長は、保護者から法と県マニュアルに沿った対応を具体的に求められ、町教育委員会からも記録を残すよう指導されていた。それでも、いじめ対策委員会の協議記録を作成しなかった。
記録を始めたのは、保護者が東信教育事務所や町教育委員会へ学校対応の調査を申し立て、学校に記録が存在しない事実が、外部機関による検証の対象となった後である。
この経過から、少なくとも、法令を知らなかった、記録方法が分からなかった、あるいは一時的に多忙だったという理由で、過去の不作為を正当化することはできない。
長野県いじめ対応マニュアルは、いじめについて組織的に対応するため、メモを含む詳細な記録を残すこと、いじめか否かが判断される前の段階から記録すること、指導等に関する記録を一元化することを明確に求めている。
【岡部温樹校長が記録を残さなかった経過】
- 保護者から、法と県マニュアルに沿った組織的対応を繰り返し要請された
- 町教育委員会からも、記録を残すよう指導された
- それでも協議記録を作成せず、外部機関への申立て後になって記録を始めた
全国の調査でも繰り返される「組織的不対応」と「記録不備」
御代田南小学校で確認された記録不存在と組織的不対応は、全国の重大事態調査や公的な検証でも繰り返し指摘されている。
大阪府箕面市——「組織的対応を行わなかった」「記録保管が不十分」
大阪府箕面市のいじめ重大事態第三者調査委員会による答申では、学校対応の問題として、次の点が指摘された。
「学校のいじめ防止対応方針に基づき組織的対応を行わなかった点、調査資料や会議録等についての記録保管が不十分な点」
さらに、学校内では学年会議などが行われていたものの、情報共有に終始し、専門家の意見も踏まえて対策を決定する学校いじめ対策組織としての対応ができていなかったと説明されている。
新潟県立高校——「対策組織は機能しておらず」
新潟県議会の公式記録では、県立高校生徒の自殺事案に関する第三者委員会報告書について、次のように説明されている。
「今回の報告書では、当該校の対策組織は機能しておらず、生徒の自殺事案が発生したと指摘されており」
いじめ対策組織を形式上設置していても、実際の事案で機能させなければ、子どもの安全を守る制度にはならないことを示している。
京都府長岡京市——「数年後に調査を依頼されることもある」
長岡京市いじめ防止対策推進委員会では、いじめ事案が数年後に重大事態として認定される場合に備え、次の指摘がなされている。
「記録をきちんと残しておくことも大切。重大事態の訴えの期限は明記されていないため、数年後に調査を依頼されることもあり、それを断ることはできない。」
重大事態調査は、必ずしも事案発生直後に始まるとは限らない。だからこそ、学校には、後から検証できる正確な記録を残す責任がある。
これらの公的記録が示すのは、いじめ対策委員会を機能させず、協議や対応経過を記録しないことが、単なる事務上の不備ではないということである。
情報が組織に集約されず、危険性が評価されず、対策が更新されず、後の重大事態調査でも事実確認が困難になる。御代田南小学校で確認された問題は、全国の重大事態調査で繰り返し指摘されてきた、組織的不対応と記録不備の問題に共通している。
「私が判断することではない」——責任を問われても他人事の岡部温樹校長
仮に、岡部温樹校長が「法の解釈を誤った」「多忙で記録できなかった」と説明したとしても、それだけで過去の不作為を正当化することはできない。
前述のとおり、岡部温樹校長は、保護者から法と県マニュアルに沿った対応を繰り返し求められ、町教育委員会からも記録を残すよう指導されていた。したがって、「法の内容を知らなかった」「記録方法が分からなかった」という説明は成り立たない。
6月29日の面談では、保護者が、いじめ対策委員会を開かず、記録も残していないことについて、地方公務員法上の服務義務違反や故意の不作為に当たるのではないかと追及した。
これに対し、岡部温樹校長は次の趣旨を述べた。
「そこの判断は、私としてはできませんけれども」
服務義務違反に該当するかを最終的に判断するのが任命権者等であるとしても、自らが法定の組織を使わず(いじめ対策委員会を開催せず)、協議記録を残さなかった事実について、学校の最高責任者として説明する責任はある。
人事権を有する長野県教育委員会の出先機関である東信教育事務所へ提出する事故速報カードには、実際には開催していないいじめ対策委員会を開催したと記載する一方、その矛盾と責任を問われると、「私としては判断できない」と回答する。この姿勢は、学校の最高責任者として著しく無責任である。
記録を残さない運用は、後から学校側に都合のよい説明だけを選び、公的文書へ記載する余地を生む。だからこそ、いじめ防止対策推進法と長野県いじめ対応マニュアルは、個人の記憶や裁量に依存せず、組織で判断し、その経過を記録することを求めているのである。
記録を残さなかったことで生じた、明確な損害
岡部温樹校長名で提出された事故速報カードの虚偽記載と、いじめ対策委員会の協議記録を残さなかった不作為は、学校内部だけの問題ではない。
被害女児と保護者、町教育委員会、第三者委員会、そして調査費用を負担する町民に、具体的な損害と追加負担を発生させている。
税金と行政リソースの浪費
学校が事案発生当時に作成すべき記録を残していれば、町教育委員会が、後から関係教職員へ事情を聴取し、第三者委員会用の資料を作り直す必要はなかった。
さらに第三者委員会も、学校の一次記録を基礎として調査を進めることができた。
しかし実際には、学校に記録がないため、町教育委員会が事後聴取を行い、第三者委員会も今後、改めて関係教職員への聴取を行わなければならない。
教育委員会職員の作業時間、資料整理、関係者との調整、第三者委員による会議と聴取には、公費が投入される。
学校が法と県のマニュアルに従って記録を残していれば不要であった作業へ、町民の税金と行政リソースを費やさなければならなくなっているのである。
被害女児と保護者へ転嫁された立証負担
学校側に協議記録がなければ、被害女児と保護者は、被害が発生するたびに、それまでの経過を最初から説明し直さなければならない。
保護者は、学校が残さなかった事実関係を補うため、メール、録音、公印付き文書、診断書、公文書公開請求の結果などを自ら保存し、整理し、提出してきた。
さらに、弁護士への相談、公文書公開請求、申立書の作成、学校・教育委員会との長時間に及ぶ面談など、多大な時間、費用、精神的負担を強いられている。
本来、学校が公的責任として行うべき記録作成と検証の負担が、被害者側へ転嫁されているのである。
記録を残さず、危険性の評価と対策の見直しを行わなかった不作為は、2026年3月4日の暴行という二次被害を招いた重大な要因である。
本件の被害拡大について、学校の最高責任者である岡部温樹校長の管理上の責任は極めて重い。
虚偽文書記載は、御代田町のお家芸?
今回の岡部温樹校長名による事故速報カードの虚偽記載を検証する中で、一つの疑問が浮かび上がる。
- 2022年に発生した、小園町長の公印不正使用による虚偽文書作成
- 2025年に発覚した、経済産業課 係長の虚偽文書作成
- そして今回の、岡部温樹校長名で提出された事故速報カードの虚偽記載
御代田町の町長自身が公印の不正使用をめぐって懲戒処分を受け、その後、別部署でも懲戒処分が発生した。
そこへ、教育現場から東信教育事務所へ提出された事故速報カードの虚偽記載が加わった。
御代田町では、不都合な事実を覆い隠すため、虚偽の文書を作成して事務を進めることが「悪しき慣例」にでもなっているのだろうか。
独立性と公正性が強く求められる教育現場にまで、この文書行政の病理が及んでいるとすれば、自治体としてのコンプライアンスやガバナンスは深刻な危機にある。
虚偽記載と記録不存在が示す、学校管理の破綻
一連の公文書と録音から確認できるのは、単なる学校対応の遅れや、教職員間の連携不足ではない。
- 保護者から重大事態としての対応を繰り返し求められながら、正式な報告・調査手続へ移行しなかった
- いじめ対策委員会を開催せず、協議記録も残さない一方、事故速報カードには委員会を「開催した」と記載した
- 9月22日以後の複数人による見守り下で被害が続いた事実と、その安全管理上の失敗を事故速報カードから脱落させた
- 3月4日の受傷を伴う暴行について、当時の事故報告を行わず、月例報告でも実態に即さない分類をした後、保護者の申立てを受けて重大事態の疑いがあるとの認識へ変更した
- 重大事態の申立てに至った学校側の対応経過を記載せず、「事態が複雑化した」とする説明へ置き換えた
- 一次記録がないため、町教育委員会と第三者委員会に事後聴取という追加作業を生じさせ、外部からの追及後になって記録運用を始めた
事故速報カードは、岡部温樹校長を報告者として提出された公文書である。
そこに、実際には開催していない法定のいじめ対策委員会を「開いた」と記載した以上、単なる表現上の違いでは済まされない。
また、学校が協議記録を残さなかったため、町教育委員会が教職員へ事後聴取を行い、第三者委員会が改めて同じ関係者へ聴取しなければならなくなっている。
記録を残さず、組織的な危険性評価と対策の見直しを行わなかった不作為は、被害女児が複数回にわたって被害を受ける事態を防止できなかった重大な要因である。
本件の被害拡大について、学校の最高責任者である岡部温樹校長の管理上の責任は極めて重い。
子どもの安全に関わる法定手続を機能させず、上部機関へ事実と異なる報告を行い、その結果として被害者、教育委員会、第三者委員会、町民へ追加負担を生じさせた責任について、今後の重大事態調査で徹底的に検証されなければならない。
とりわけ、複数人による見守りを実施していながら、その監視下で被害を防止できなかったという学校の安全管理上の失敗を事故速報カードから消し、未開催の委員会によって新たな見守り体制を検討したかのように記載したことは、学校の不作為を上部機関から隠すために事実関係を意図的に組み替えたものと評価せざるを得ない。
本サイトは引き続き、公文書、録音、学校作成文書、教育委員会の説明など、確認可能な証拠に基づき、御代田南小学校と岡部温樹校長の対応を検証していく。
本記事で使用した主な資料
- 2026年4月17日発信「事故速報カード」
- 2026年4月2日・学校および町教育委員会との面談録音(第3回記事で発言内容を掲載)
- 2026年4月10日付・岡部温樹校長回答書(第3回記事で内容を検証)
- 2026年6月26日・町教育委員会からの回答メール
- 2026年6月29日・学校および町教育委員会との面談録音(第3回記事で発言内容を掲載)
- 東信教育事務所担当者への事故速報カードの取扱いに関する確認
- 長野県教育委員会「学校における性暴力発生時の事故報告の取り扱いについて」(27教義第630号の存在および報告経路を確認する補助資料)
- 2026年8月5日・町教育委員会担当者との電話内容
- 2026年5月12日付・令和7年度のいじめ対策委員会に関する公文書公開請求書
- 令和7年度のいじめ対策委員会に関する公文書公開請求結果
- 過去5年度分のいじめ対策委員会記録に関する追加請求
- いじめ防止対策推進法
- 長野県いじめ対応マニュアル
※1:本記事では、学校・教育委員会が作成した公文書、保護者とのメール、回答書、面談録音、公文書公開請求の結果、町教育委員会担当者からの説明などをもとに、確認できた事実、関係者の説明および本記事による評価を、可能な限り区別して記載している。※2:岡部温樹校長の発言は、2026年6月29日の面談録音に基づく。趣旨を変えない範囲で、不要な言いよどみ等を整理している箇所がある。※3:「被害女児」「加害児童B」は、本記事上の便宜的な表記であり、児童個人を特定するものではない。※4:町教育委員会担当者からの説明は、2026年8月5日の電話内容に基づく。第三者委員会は、本記事作成時点では提出書類を精査している段階であり、本格的な調査は開始されていない。※5:3月分月例報告の分類、事故速報カードの作成根拠・作成理由および両文書の整合性に関する記載は、2026年6月26日付の町教育委員会回答メールに基づく。※6:事故速報カードの一般的な利用方法に関する記載は、保護者が東信教育事務所担当者へ確認した内容に基づく。同担当者は、受傷を伴う暴力事案の発生時に事故速報カードを提出する利用が一般的である一方、後にいじめ重大事態となった段階で報告のために作成する場合もあるとの趣旨を説明している。本記事では、この二つを別個の報告手続として区別している。なお、長野県教育委員会の「学校における性暴力発生時の事故報告の取り扱いについて」は、教職員による性暴力等を対象とする資料であり、本件の児童間暴力の提出基準を直接示すものではない。同資料は、「義務教育諸学校等に係る報告事項等について」(27教義第630号)の存在と報告経路を確認する補助資料として参照している。





















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