ガソリン“カルテル”疑惑 長野県知事が追及
ガソリン価格の事前調整疑惑を巡り、知事は再度調査するよう求めました。
長野県石油商業組合 高見澤秀茂理事長
「8支部の出席者それぞれに『事実は存在しない』と返答があり、報道の事実確認はできませんでした」
ガソリンの販売価格を事前に調整していたカルテル疑惑で、長野県から事実確認の調査を求められていた県の石油商業組合は、先月28日に「事実は存在しなかった」と報告しました。長野県 阿部守一知事
「そんな話をしているのではありません」
事実は存在しないという調査結果に納得できなかった知事は、怒気をはらんだ声で追及する場面もありました。事実関係の確認を再度実施するよう求めました。~「グッド!モーニング」2025年3月1日放送分より
阿部知事は現在4期目を迎えていますが、長野県のガソリン価格がどこも同じく全国で最も高いという状況は、少なくとも知事の1期目から問題視されていたのではないでしょうか。
にもかかわらず、報道で取り上げられると激しく反発する様子は、県民から見ると単なるパフォーマンスにしか映りません。
県民に不利益なことが蔓延している理由
長野県では、ガソリン代だけでなく、水道代や光熱費など生活インフラにかかるコストが非常に高いですよね。それにもかかわらず、市民の間で問題が明らかになっているのに、いまだに解決の兆しが見えないのはなぜでしょうか。
その大きな要因は、長野県の行政効率の低さにあるのです。
長野県の自治体多過ぎ問題
以前から不思議に思っていたのですが、長野県って自治体が多すぎませんか?人口も昨年には、とうとう200万人を下回り、県外転出者が後を絶たない状況です。
面積の広さと自治体数が、比例しているのか?とも見られるのですが、そうでもなさそうです。例えば、岩手県は、長野県より面積が広いですが、自治体数は、長野県の半分以下です。
福島県:面積13,783㎢、自治体数59
長野県:面積13,562㎢、自治体数77
分岐点は平成の大合併
長野県と岩手県で自治体数に大きな差がある背景を、以下のように整理しました。
- 平成の大合併の概要
国が主導し、市町村数を大幅に減らすことで「行政効率化」「財政基盤強化」を図った政策
実施前の1999年には全国で3,232の市町村があったが、2010年には1,727に半減(現在は約1,718) - 合併の効果
一部自治体では、広域サービスの実現や管理コスト削減などが進展
財政基盤が安定し、住民サービスの維持・強化につながった - 岩手県と長野県の対照的な動き
岩手県:若年層の流出が深刻だったため、積極的に市町村合併を推進し、大きな成果を挙げた
長野県:地域アイデンティティや既得権益を重視し、合併に消極的
県職員・議員サイドの抵抗もあり、大規模統合が進まなかった - 自治体数が多いことによる弊害
行政効率の低下 ⇒ 住民サービスの質が落ちる
サービス低下 ⇒ 県外・都市部への転出が増加 ⇒ 若者流出を加速
これが自治体衰退の「負のスパイラル」を生む
長野県は地域への愛着や既得権益が強く、大規模合併に踏み切れなかった一方、岩手県は切実な課題感から合併を進め、効率化と若者定着の両面で成果を出しています。
岩手県における自治体統廃合の主な成果
- 行政コストの削減・効率化
合併前に比べて、庁舎や公共施設の統廃合が進み、運営・維持管理コストが大幅に削減されました。
職員数も最適化され、組織のスリム化・事務の効率化が進行。 - 財政基盤の強化
合併特例債など国からの支援も受けられ、インフラ整備や住民サービスの質向上に一定の投資が可能に。
広域化によるスケールメリットで、調達コストや事務コストも低減。 - 行政サービスの均質化・維持
小規模自治体単独では維持が難しかった行政サービス(例:医療、福祉、教育)も、広域合併で安定的な運営が実現。
合併で生じるサービス格差の是正に取り組み、住民の利便性向上に寄与。 - 広域的なまちづくり・産業振興
合併によって人口・面積規模が拡大し、より広域的な観点から都市計画や産業振興政策を推進できるように。
観光・産業の広域連携も促進しやすくなった。 - 災害時の対応力強化
行政規模拡大により、防災・減災体制が強化。災害時の広域的な支援や連携がスムーズになった。
行政効率の悪さの弊害はDX化にも影響
長野県と岩手県では、行政効率の状況に大きな差が生じています。
まず岩手県では、「平成の大合併」を積極的に推進し、市町村の統廃合によって行政組織の効率化と広域的な連携基盤を構築しました。そのうえで、以下のようなDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を着実に進めています。
- 県全体のDX推進計画を早期に策定
- 情報通信インフラ(光ファイバー)整備率ほぼ100%の実現
- 市町村レベルでは一関市などで全国トップクラスのDX実績
これらの取り組みにより、行政コストの大幅削減やサービス品質の向上が可能になっています。
一方、長野県は自治体数が多く、町村の規模も小さいため、システム標準化や広域連携が進みにくいのが現状です。さらに、デジタル人材の不足や地理的・社会的条件も影響し、地域ごとにDXの進捗にばらつきが生じています。その結果、岩手県のような統一感とスピード感をもって行政改革を推進することがまだまだ難しい状況です。
項目 | 岩手県 | 長野県 |
---|---|---|
県の戦略 | 岩手県DX推進計画を策定し、全庁一体で推進。 | スマートハイランド推進プログラムと信州ITバレー構想を展開。 |
通信基盤整備 | 光ファイバ整備率99.96%、全市町村で整備完了。 | データ連携基盤の共同利用を推進中。 |
市町村の取り組み | 一関市が全国ランキング6位、二戸市で職員意識調査実施。 | 松本市や中野市、飯綱町などで先進的なDX施策を展開。 |
課題 | 一部自治体でのDX推進の遅れやデジタル人材の不足。 | 地域間での取り組みの差やデジタルデバイドの解消が課題。 |
効率化がガバナンスを強化し不祥事のリスクを低減
岩手県は、平成の大合併によって市町村数を大幅に減らし、行政組織のスリム化と効率化を着実に進めてきました。その結果、ガバナンスや監視体制が一元化・強化され、組織の透明性と内部統制が向上しやすい環境が整っています。
一方で長野県は、合併が進まなかったために行政組織が分散・小規模化し、人に依存する運営が残ってしまいました。このため、監視・ガバナンス体制が十分に機能せず、不正や不祥事が発覚しにくい、あるいは発覚しても是正が遅れがちな構造になっています。その結果、議員の重大犯罪や業界との癒着など、深刻かつ多様な不祥事が表面化しやすい状況です。
実際、過去10年間の行政・議員不祥事を比較すると…
長野県と岩手県の行政・議員の不祥事比較
分類 | 長野県の主な事例・傾向 | 岩手県の主な事例・傾向 |
---|---|---|
刑事事件 | ・元県議(丸山大輔)による妻殺害事件(2021年 塩尻市) | ・過去10年で重大な刑事事件の報道例はほとんど見られない |
公職選挙法違反 | ・市議による寄付行為や買収、地位利用など複数件 | ・県議選候補運動員による買収で書類送検例あり |
政治資金規正法違反 | ・若林健太衆院議員など収支報告書の不記載問題 | ・藤原崇衆院議員など収支不記載問題 |
職員の不祥事 | ・市町村職員の公用車私的利用、情報流出など | ・盛岡市職員の個人情報不正利用等 |
議員の不倫・民事トラブル | ・県議殺人事件で不倫関係・金銭トラブルも指摘 | ・重大な報道例は確認されていない |
その他不祥事 | ・政務活動費不正支出、業界団体との癒着疑惑など | ・一関市議出張名目の観光(公費の私的流用的行為)が指摘された例 |
業界との癒着・カルテル疑惑 | ・ガソリン業界でカルテル疑惑、行政の監視機能の弱さも批判 | ・顕著なカルテル疑惑等の大規模事案は近年確認されていない |
傾向・特徴 | ・刑事事件含む深刻な個人事件、政治資金・選挙絡みの不正、業界癒着が複合 | ・比較的スケール小さめの不正が多いが、全体の件数自体は少ない傾向 |
長野県は、全国的にも稀な現職議員による殺人事件(私生活トラブル含む)や、政治資金問題、業界癒着による価格問題など“深刻かつ複合的”な不祥事が目立ちます。
平成の大合併という20年前の取り組みの違いで、ここまでの差が出てしまうのですね。
行政の無関心・怠慢がガソリンカルテルを野放しに
長野県のガソリン価格高騰と価格調整疑惑は、行政効率の遅れやガバナンスの問題と深く結びついています。
- 監視・規制機能の遅れ
他県に比べ、行政の監視・規制強化や情報公開、業界団体のガバナンス改善が大きく立ち後れていたため、価格問題が長く野放しになっていました。 - 長期政権下での問題対応
阿部知事は2025年現在、4期目を務めていますが、その間もガソリン価格は全国でも突出して高いままです。
県民や専門家からは、問題意識や具体的対策が示されない。
カルテル疑惑が報道や公取委調査で明るみに出ても、「協力する」「遺憾に思う」といった表面的なコメントにとどまり、実効性ある対策を打ち出さないといった批判が根強く寄せられています。 - 組織体質の影響
長期政権による“慣れ”や当事者意識の低下。
県庁組織の事なかれ主義や官僚的体質などが、迅速かつ抜本的な改革を阻む要因となっています。
他の都道府県のカルテル防止の取り組み
繰り返しになりますが、長野県のガソリン価格問題に対する知事・行政の無関心や対応の遅れは、まさに行政ガバナンスや組織レベルの問題が根底にあります。
他県では、県独自の燃料流通モニタリングや消費者・事業者への情報提供、価格高騰時の助成策などを導入する例もありますが、長野県はそうした動きに消極的でした。
「閉鎖的な地域経済圏と行政のゆるい関係」が、カルテル的な状況や価格高騰を長期化させる温床になっているとも考えられます。
長野県と他県のガソリン価格への行政の問題意識と対応策の違い
長野県
・ガソリン価格の高さが慢性的に続いていたが、知事や県庁から積極的な調査・改革提案は乏しかった。
・業界団体や地元企業との距離が近く、価格カルテル疑惑の監視や情報開示が遅れがち。
・消費者保護や流通構造改革の旗振り役になる動きが弱く、行政の姿勢も消極的だった。
他県(例:山形県・静岡県など)
・ガソリン価格が高騰した際、県独自の実態調査や価格情報のWeb公開、消費者からの通報窓口設置など迅速な対応例あり。
・業界団体と一定の距離を置き、公正取引委員会などへの情報提供やモニタリングを積極的に実施。
・エネルギーコストが地域経済や住民生活に及ぼす影響を重視し、助成金や補助制度の導入にも前向き。
国内の先進事例
- 山形県:生活必需品価格の情報公開
山形県は、ガソリン・灯油をはじめとする生活必需品価格について、県が独自に価格調査を実施し、Webサイトなどで週次で公開。
消費者の「情報格差」を減らし、不透明な価格形成への抑止効果を狙う。業界団体へのヒアリングも定期的に実施し、談合や不当な価格操作の予防に取り組む。 - 静岡県:エネルギーコスト対策と競争促進
県が独自にガソリン価格の高騰に対応するための補助金を緊急的に支給。
公正取引委員会や消費者団体と連携して監視体制を強化し、不正取引の疑念があれば即調査。
価格情報サイトとの連携や、消費者からの通報体制を設けている。 - 東京都:消費者参加型モニタリング
ガソリン価格や電気・ガス料金など、住民からの通報やアンケートをもとに、県(都)が定期的に市場調査・監視。
問題が発覚した際は素早く公表し、監督官庁と連携して対応。
こうして、ガソリン価格に対する他県の取り組みを見ていると、いかに長野県政が何もしていないか一目瞭然ですよね。岩手県とのガソリン平均価格の差もそれを現しています。
岩手県と長野県のガソリン平均価格の比較
ハイオク | ||
レギュラー | ||
地域アイデンティティは重要ですが、それが行政の効率化の改善に着手しない理由にはなりませんよね。
あなたは、日本一高いガソリン代、高額な水道光熱費を支払い続けても、地域アイデンティティを守っていきたいですか?
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