静岡県榛原郡にある吉田町(人口約1万5千人)の町長の議会だよりを読んで、同規模の自治体である御代田町の議会との差に驚いています。
以下に転載した、今から13年も前の2010年1月に広報された吉田町の「町長の議会だより」。その全文を読んでみてください。如何に御代田町が民主主義をきちんと実施せず、他の自治体と比べて後れているかが理解できると思います。
あらすじ
御代田町で起こった前代未聞の小園拓志町長による公印不正使用によって日本財団から6,000万円もの助成金を(一社)御代田の根が不正に得ることになり、その助成金採択を理由に旧庁舎跡地を(一社)御代田の根に賃貸借するという事案は、多くの町民から批判を受けています。
一方、吉田町でも13年前に「中山三星建材(株)工場跡地買収」において、この買収した土地の利活用を進めるために、新任町長が当時の事務処理を確認する必要に迫られ、書類を探した結果、信じがたいようなずさんな処理経過であったことがわかり、議会に調査を要請したところ、議会がそれに応じなかったという問題に対して、議会のあり方を「広報よしだ」で意見したものとなります。
御代田町の対立構造とは異なりますが、双方共に議会が正常に機能していなかったことによって、町民に損害が出ている事例です。
町長の議会だより
議会が守る町民の利益とは何か
議会は町民の利益を守るために存在し、首長が恣意的な行政の運営をしていないか、あるいはさまざまな事業について法律面や運営面から見て問題がないか審議を行い、また、町民の皆さまの声を吸い上げて町政に反映させるなど多くの重い課題を担っています。
議会を構成する議員の皆さまは、お一人お一人が議決権を授けられ、町民の皆さまになり代わって首長が議会に提案する議案をさまざまな角度から審議し、認めるか認めないか議決権を行使して賛成・反対を表明します。可決となれば事業は執行され、否決となれば事業は執行されません。また、首長の行政運営に問題があると判断すれば、特別委員会を設けて調査を行います。
首長が町民の利益を守って行政を行っているか否かという一点を見極めて、議決権は行使されるものと理解をしています。
それでは、議会が守るべき町民の利益とは何でしょうか。首長が提案する事業にかかわる議案は、一方において、事業の目的や目指す成果などの内容が述べられ、他方において、投入される予算が計上されています。
議員は、まず、事業の必要性について、次いで、適法性について、最後に、事業の目的や目指す成果と予算の釣り合いなどについて審議し、問題がなければ、当該の議案は町民の利益にかなっていると判断されるのではないでしょうか。
また、行政運営については、首長の恣意性の有無などについて判断し、さらに町民の利益が守られたか否かを調査し、守られていないと結論付ければ首長に対して是正を勧告し、場合によっては首長に不信任を突き付けることになります。
議会は町民の負託に応えているか
町のみなさん、お元気ですか。11月27日、28日、29日の3日間にわたって議会報告会がそれぞれの自治会で開催されました。
また、24日には行政当局に対しても議会報告会が開催されました。それぞれの自治会において開催された議会報告会では、地域の方から厳しい意見が多数出されたと聞き及んでいます。
厳しい意見の一つは、中山三星建材(株)工場跡地の購入事案に対する議会の責任と対応であったとのことでした。ところで、この購入事案のその後の対応について、議会は町民の
利益を守るように動いたのでしょうか。私は、「議会は調査特別委員会を設けるとともに、監査委員に監査を求め、工場跡地の購入事案について調在を行ったものの、真相の解明については有耶無耶にしてしまったことにより、町民の利益は守られず、反対に町民の利益に背く結果を招いたのではないか」と考えています。
私が議会に調査をお願いした目的は、「この工場跡地の購入は首長の恣意的な行政運営の結果であり、この真相を明らかにすることによって恣意的(勝手気まま)な行政運営を排除するシステムを議会と共に築きあげたい」と熱望したからに他なりません。
自治体の運営において最も大事なことは、「誰が首長になっても、首長の恣意的な考えによって行政の運営が行われてはならない」といった鉄則を選挙で選ばれた首長や議員が胸に刻み、政策の立案および決定、並びに審議に臨むことではないでしょうか。
議会には危機管理が働いているか
昨年末の第4回(12月)議会定例会において、藤田和寿議員から「町の危機管理について」と題した一般質間が出されました。この質問の肝心な部分は、「危機管理の考え方」にあります。
自治体の危機は、一言で言えば、「住民からの批判の発生と伯頼の喪失」に尽きます。自治体が最もダメージを受ける危機は、住民に対して「説明できないこと」や「説明しても納得してもらえないこと」を起こしてしまうことです。従って、危機が起こらないように危機を管理することが求められ、さまざまな対策が講じられることになります。
危機管理には、危機が起こらないよう「未然防止のための危機管理」と、危機が発生した際の「発生時対応の危機管理」の二種類があり、前者はリスク・マネージメント、後者
はクライシス・マネージメントと呼ばれています。議会は、先ほど述べたように、町民の利益を守るといった鉄則に基づいて、首長が提案した議案などを審議し、行政運営に疑義があると判断すれば、特別委員会を設置して調査します。一言で言えば、民意に沿うことが議会の「未然防止のための危機管理」となるのではないでしょうか。
議会は、中山三星建材(株)工場跡地の調査活動では、八木宣和議員の監査報告によって危機が発生したにもかかわらず、その危機によって起きたダメージを行政当局や自治会などの説明要求に積極的に応えて最小限にしようとはせず、反対に断固拒否してダメージをさらに大きくしました。
その上、工場跡地の購入は「行政財産を取得する要件は満たしていなかった」とする最終報告を議決せずに棚上げし、あろうことか、「購入は問題があった」とした最終報告をまとめた調査特別委員会の委員長を務めた藤田和寿議員は、「購入は問題がなかった」とした監査結果報告と「問題があった」とした最終報告を「真摯に受け止める」とした、日本語として全く理解不能の発議案の提出者として名乗りを挙げられたのです。
なぜ、危機管理が働かなかったのか
まず、八木宣和議員が、監査委員に与えられていない「利害を調整する権限」によった監査報告書を提出した時点で、議会は危機が発生した事態を重く受け止めるべきでした。
議会は、起きてしまったことは仕方がないと判断し、危機が発生した時点で行政当局や自治会、あるいはマスコミと意志の疎通を図り、議会の受けたダメージを最小限に食い止める措置を講ずるべきでした。
次いで、「購入は問題があった」と結論付けた最終報告は、吉田町議会会議規則をねじ曲げずに、規則に従って議決すれば議会の意志が明らかになったはずでした。
議会は、工場跡地の購入事案の調査では、真相を有耶無耶にして葬り去り、議会に課せられた「町民の利益を守る」使命を忘れ、町民の皆さまの伯頼を失う結果を招いてしまったのではないでしょうか。
議会の信頼回復の手立ては
議員のお一人お一人は、「有権者から議員に授けられた議決権の行使は『町民の利益を守る』という一点に懸かっている」ことに思いを寄せていただきたいと願うものです。
中山三星建材(株)工場跡地の購入事案は、首長の恣意的な行政運営を問いただし、なぜこのようなことが起きてしまったのか真相を明らかにした後、議会と手を携えて「透明性の担保された行政運営の仕組み」を町政運営の土台に据え付ける絶好の機会であっただけにかえすがえすも残念であり胸が張り裂ける思いです。
今からでも遅くはないと思います。
今一度、議員の皆さまは、まず、最終報告を議決し、次いで、「議会の役割は、町民の利益を守る」という原点に立ち返り、監査委員である八木宣和議員にはありもしない「利害を調整する権限」を持ち出してまで「エ場跡地の購入は問題なかった」とした説明を、藤田和寿議員には「内容が全く相いれない監査報告と最終報告を真摯に受け止める」などといった議会を冒涜するような発議案の提出者になった説明を求める手立てを講じ、町民に対する伯義回復のサインとすべきではないでしょうか。~2010年1月:広報よしだ「町長の議会だより」より
吉田町の土地買収における問題点
中山三星建材(株)工場跡地買収の問題点の詳細を当時の議事録からピックアップして転載します。
これを読んでいただければ、町政が正常でも議会が腐っていても駄目ということが伝わってきますね。それでも、町政も議会も両方が腐っている御代田町と比べれば、一方が問題解決の動きを見せているわけですから、まだ希望がありますね。
中山三星建材(株)工場跡地買収事務検証結果報告に関する事項に係る監査結果報告についての当局の考え方や、議会にお願いしたい事項などを述べさせていただきます。
そもそも、当局が中山三星建材(株)工場跡地買収事務を検証することといたしましたのは、この土地の利活用を進めるために、当時の事務処理を確認する必要に迫られ、書類を探しました結果、信じがたいようなずさんな処理経過であったことがわかり、議会に調査を要請させていただきましたが、議会がそれに応じなかったことに端を発しております。
行政財産として、議会の議決を経て取得した財産を売却することは、当時の議決に反することであります。このため、当局としては過去の議決を尊重し、この土地を行政財産として活用すべきかどうかについて、議会の御意見を伺いながら判断しなければならないと考え、その場合の議会の判断資料としていただくために、事務検証を進めたわけであります。 その検証の結果、利用目的も定めずに、あいまいな形で購入したことが明らかになったばかりか、町が取得するようになった経過の中にも、説明できないような多くの問題点が存在することが露呈してまいりました。
議会では、こうした状況を踏まえ、本年5月 15 日に調査特別委員会が設置され、また同時に監査委員に対して監査請求を行い、中山三星建材(株)工場跡地買収事務の調査に踏み切られましたので、これで当町の事務が正常化され、町民の皆様方に説明できる状況のもとで、安心して事務を進めることができるようになるものと、大いに期待したわけでございます。
しかしながら、議会の監査請求に基づく監査結果報告書は6月 20 日に公表され、その内容を目にして愕然といたしました。 本来、公正中立な立場で行政に対して間違いのない事務処理の遂行を指導しなければならない立場にある監査委員が、監査結果報告書の中で、みずからの文章として、本来付与されるはずのない「利害を調整する立場から」の監査であり、利害を調整するために総括所見を述べたことを明記した報告書が公表されました。
そして、取得後の行政上の利用目的も定まっておらず、一貫性のない取得目的であることについても許容し、PCBの処理問題も抱え込んだ建物や物件の取得につきましても、「町の利益になった」と不可解な見解を示し、最後には「司法の手にゆだねるような金銭の授受は見当たらない」と、監査委員の特異な感覚に基づく文脈を用いて、当時の一連の事務を容認する内容をつづっておられます。さらには、議案上程手続や起債申請手続などの事務的な部分におきましても、明らかに一般常識と異なる見解を示されました。
さらに驚愕しましたのは、可能な限り適正な事務処理に近づけようとする当局の試みを惑わすような不可解極まりない報告を行った監査委員が、詳細な説明を求める当局や住民の声にも一切応じないという、まことに傲慢な振る舞いを目の当たりにいたしたことであります。民主政治が定着して幾久しく、さらに透明感のある行政運営を求める声が高まっている昨今において、今行われている当町の監査委員の対応や、問題を直視しない議会の対応が、現実の出来事であるのかと疑わざるを得ませんでした。
当局は、この監査結果報告書は、法的または実務的に誤りのある見解が多々記述された不適切なものであると確信しており、誤った見解が流布されることによりまして、行政事務に混乱を来し、町民の利益が損なわれるような事態を引き起こすようなことがあってはならないと危機感を募らせております。
このため、今定例会を前にして、議会でもこの監査結果報告書が、多くの不適切な内容が記述された信憑性に欠けるものであると認識され、当局が抱いている疑義を解き明かしていただき、正しい見解が広く町民に示されるよう、早急に意見を付して公表していただくよう要望する内容の文書を、議長あてに提出させていただきました。
目下、この監査報告書に関して、監査委員と当局とが直接話し合える場を持つことができない状況でありますので、監査委員がどのような根拠に基づいて結論を導き出されたのか、どうして誤りのある見解を公表されたのかも不明のままでありますが、でき得ることならば、今からでも監査委員に御教示賜り、その結果として、当局が改めるべきものがありますれば、監査委員に正していただき、町民の皆様方の利益を損なわないようにしてまいりたいと存じておりますので、議会としましても趣旨を御理解いただき、特段の御配慮をお願いしたいと存じます。
もし、これがかなわない場合におきましては、監査報告書を受け取られました議会が、監査委員にかわって当局を御指導賜りますよう、重ねてお願い申し上げる次第でございます。 目下、中山三星建材(株)工場跡地は企業誘致のために売却しようとしており、購入してくださる企業を探しているところでございますが、現在のように当局の検証結果報告と監査委員の監査結果報告とが、相反する内容となっている状況では、当局としても売却のための事務を進めるには、一抹の不安を覚えております。
また、議会としましても、今後提出される財産の売却に関する議案の審議が難しくなるのではなかろうかと心配もいたしております。議会も、当局も、町のため、町民のために行政運営を担っているわけでございますので、いずれにいたしましても、町民の皆様方が納得される選択を行わなければなりません。そのためには、町民の皆様方にわかりやすい情報を提供し、それぞれの結論を持っていただくようにしなければなりませんので、ぜひとも議会には、次の5点につきまして、明確な見解を町民の皆様方に披瀝していただく必要があると考えております。
まず1点は、中山三星建材(株)工場跡地の取得は、地方自治法などに定められた行政財産としての取得要件を満たしていたのか。2点目は、中山三星建材(株)工場跡地を工場用地として売却することの是非は。3点目は、売却は非であるとしたら、その具体的な利活用方策は。4点目は、中山三星建材(株)工場跡地を取得したことによって、町民は損害をこうむっていないのか。5点目は、損害をこうむっているとしたら、その損害をどのような形で補てんすればよいのかでございます。 当局としましては、議会がこの5点についての見解を公表し、その見解を町民の皆様方が容認される状況となりましたときに、ようやくこの問題が収束できるのではないかと考えております。
今後、二度と基本原則を恣意的にねじ曲げることのない、信頼感のある行政運営が持続される町にするよう、当局は精進してまいりますので、議員の皆様方もこうした意識を当局と共有していただき、町民の代表として大いに奮闘されますことを切に期待するところでございます。~平成20年第3回吉田町議会定例会:吉田町議会会議録より